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日々雑感:いい皮膚はゆっくり育ってきちんと死ぬ

【カテゴリ】 日々雑感 2011年06月24日

 今回のテーマは、皮膚の最外層バリアである『角質層』と、それを作り出す表皮のしくみについてです。
 近年の研究で、アトピー性皮膚炎の患者さんは、角質層を構成する重要な蛋白質であるフィラグリンが、遺伝的にうまく形成されないことが判明しています。フィラグリンは、天然保湿因子(NMF)の主成分となるアミノ酸を作り出す原料です。これがあるおかげで、人間の皮膚は薄いのにしっかりしたバリアを保つことができるのです。角質層バリアは、適度に水分を保持し(砂漠の中でも皮膚は干からびません!)、紫外線や微生物、有害物質から体を守ってくれるのです。アトピー性皮膚炎の方たちは、ドライスキン(乾燥肌)でバリア機能が弱いので、粉をふくようにかさつくのみならず、本来なら皮膚に入り込まないはずの化学物質(特に洗剤系)が侵入することで、炎症やアレルギーを起こしてしまいます。
 清潔にと思う余り、必死に皮膚を洗い続けてアトピー性皮膚炎を悪化させている人を見ると、何とかお肌を休ませて守ってあげられないか、説明に悩みます。

 皮膚の表面を構成する二つの層について、これ以上ないくらい簡単に要約してみます。
1)表皮 ... 皮膚の最外層を構成する、生きた膜。
2)角質層 ... 表皮の表面をおおう、死んだ膜。
 まず、表皮のもっとも深い部分で細胞分裂が始まり、表皮細胞が重なり合いながら上へ上へと押し上げられていきます。最初はたこやきみたいに立体的な形ですが、上へ行くにつれてクレープみたいに薄い形になります。
 表皮の厚さは平均で50μm(マイクロメートル)、1mmの1/20という薄さ、ちなみにサランラップを3枚重ねた厚さに該当します。こんなに薄いのに簡単には破れないのは、細胞同志がお互い密に接着するしくみがあるためです。しかも単なる袋や膜ではなく、細胞のひとつひとつが、緊急時には免疫細胞として働く能力すらあるのです。
 表皮が下から上に押し上げられて、角質に移行するのに1ヶ月かかります。表皮細胞は、その内部にバリア形成のための様々な物質を用意してから自然死します(アポトーシスと言います)。
 角質層は、薄い角質細胞のすきまが細胞間脂質で埋められている状態です。クレープに生クリームを塗って次々重ねていくようなイメージ。この細胞は約20層からなり、全体の厚さは表皮の1/3くらいです。この、命のない角質バリアがあるおかげで、表皮から下の生きた皮膚は、紫外線、有害な微生物、有害物質から守られているのです。サランラップ1枚分の薄さですが、サランラップと違うのは、余分な水分は適度に放出しつつ、表面に皮膚常在菌(皮膚に有益な微生物)をはぐくむ仕組みまであること。
 角質層は下から上に押し上げられて、約2週間で、最も外側の部分がすこしずつ脱落していきます。入浴しなくても、皮膚をこすらなくても、1日平均数gの角質が自然に脱落します。
 つまり、ヒトの皮膚は、サランラップ4枚分の薄さの中に、1ヶ月半かかってゆっくりと脱皮するメカニズムを持っているということ。これ以上薄かったらバリアとしての役目は果たせないでしょうし、これより厚いうろこや甲殻だったら、ヒトの皮膚のしなやかさや運動能力は望めないことになります。実に精巧な、生命のしくみといえます。
 (他にも、汗や皮脂、真皮、常在菌などスゴイ仕組みがありますが、きりがないので割愛)
 では、毎日お風呂に入って、貴重な角質層を『垢』という名の汚れと勘違いしてごしごしこすったら?皮膚は生きていますから、何とか防衛線を守ろうとけなげに細胞分裂をフル回転させて角質を補充しようとします。しかし、もとからバリアの弱い顔の皮膚、乳幼児、アトピー性皮膚炎の人たちは補充が間に合いません。傷ついた皮膚から、シャンプーやボディソープなどの化学物質が侵入し、生きた表皮細胞を直撃し、緊急信号が出されます。つまり、かゆみとして認識されてしまいます。ヒトは、かゆければ掻く本能がありますから、つい掻いて爪で傷つけ、さらにバリアが痛む...つまり、自然界にない洗いすぎや化学物質の付着は、ヒトの歴史上かつてなかった事態で、人体実験と同じことです。
 お肌のメカニズムを理解して、自分の皮膚を無駄に傷つける習慣をやめませんか。いい皮膚は、生き急がず、ゆっくり育ってきちんと死ぬのです。角質層の寿命(あ、もう死んでますけど)を全うさせてあげましょう。

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